「探偵!ナイトスクープ」で取り上げられた12歳のヤングケアラーの回が大きな反響を呼び、行政も動き出したと報じられています。SNSでは「育児放棄では?」「親は罪に問われるのか?」といった声が急速に広がりました。
本記事では、行政が入るとは具体的に何をするのか、そして親が実際に罪に問われる可能性があるのかを、法律と行政実務の観点から整理します。
行政が入る=いきなり警察ではない
まず押さえておきたいのは、行政介入=警察の捜査や取り調べではないという点です。
この種の案件で中心となるのは、以下の機関です。
- 児童相談所(児相)
- 市区町村の子ども家庭課などの福祉部門
- 学校(担任、スクールカウンセラー)
- 必要に応じて教育委員会
目的は処罰ではなく、事実確認と支援です。
「聴取」はするが、取り調べではない
行政が入ると「聴取」という言葉が出てきますが、これは警察の取り調べとは全く異なります。
具体的には、
- 子ども本人への面談(学校や児相で、安心できる形で)
- 保護者へのヒアリング(生活状況・仕事・家庭環境)
- 学校からの情報収集(欠席状況、疲労、様子)
といった聞き取りによる事実確認が中心です。
供述調書を取ったり、罪を認めさせたりするものではありません。
行政が見るのは「危険度」
行政が最も重視するのは、次の点です。
- 命や健康に危険が及んでいないか
- 学校生活が著しく損なわれていないか
- 本来大人が担うケアを過度に背負わされていないか
これらを踏まえ、概ね次のように判断されます。
- 問題なし・軽微:見守り
- 支援が必要:福祉支援や家庭支援を導入
- 危険性が高い:一時保護や家庭裁判所対応
ヤングケアラー問題の多くは、真ん中の「支援が必要」段階に位置づけられます。
原則は「処罰」ではなく「支援」
ヤングケアラー対応の基本方針は、親を罰することではありません。
行政が行うのは例えば以下のような支援です。
- 家事・介護の外部支援の導入
- 利用可能な福祉制度の案内
- 子どもの負担を減らす役割調整
- 定期的な面談によるフォロー
「家庭が回る状態を作る」ことが最優先になります。
親が罪に問われるのはどんな場合か
結論から言うと、今回話題になっているような状況で、すぐに刑事責任が問われる可能性は低いと考えられます。
刑事責任が問題になるのは、
- 子どもが命や健康の危険にさらされている
- 長期間の放置により重大な結果(重病・死亡など)が生じた
- 行政の指導を無視し、危険な状態が継続している
といった極めて深刻なケースです。
単に「家事を手伝っている」「家庭内で役割がある」というだけでは、直ちに犯罪にはなりません。
なぜ行政が動くと誤解されやすいのか
SNSでは、
- 行政介入=育児放棄認定
- 聴取=取り調べ
- いずれ逮捕される
といったイメージが一気に広がりがちです。
しかし、実際の行政実務は非常に段階的で、冷静です。
多くの場合、最初の介入は「支援のスタートライン」に過ぎません。
まとめ
- 行政が入るとは、まず事実確認と支援を行うという意味
- 聴取は行われるが、警察の取り調べではない
- ヤングケアラー問題は原則として処罰ではなく支援
- 親が罪に問われるのは、重大な危険や結果がある場合のみ
今回のナイトスクープの件も、現時点では「罰するかどうか」より「どう支えるか」の段階にあると見るのが現実的です。
感情的な断罪が先行しがちなテーマだからこそ、法律と行政の実態を冷静に理解することが重要だと言えるでしょう。


