最近、X(旧Twitter)で「シャインマスカット流出は最強のビジネスモデル」というフレーズがトレンド入りしました。背景には、すでに日本から海外へ不正流出してしまったシャインマスカットをどう扱うべきかという問題があります。
橋下徹氏などは「摘発するよりもライセンス料を取る方向に切り替えるべきだ」と主張し、これを“最強のビジネスモデル”と表現しました。では、この考え方は国内の農家にとって本当にプラスになるのでしょうか?
すでに進んでいる「不正流出」
シャインマスカットは日本で品種改良された高級ブドウで、甘み・香り・食べやすさが特徴です。
しかし、その苗木は管理の甘さから海外へ流出し、中国や韓国ではすでに大規模に栽培され、国内産に比べて安価に市場へ出回っています。
「不正流出を完全に止めるのは難しい」というのが現状です。
橋下氏の提案する「ライセンスモデル」
橋下氏は「不正を摘発するより、正規のライセンスを設けて権利料を取るべき」と主張しています。
これは、音楽やキャラクターの使用権ビジネスに似ていて、海外で栽培してもらい、その対価を国内の権利者へ還元するという考え方です。
確かに理論上は、流出を逆手に取って収益化できる仕組みとも言えます。
国内農家の視点:メリットとデメリット
では、国内の農家から見るとどうなるでしょうか?
視点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
収益 | ライセンス料が国内農業支援に回れば、補助金や施設整備の形で恩恵を受けられる可能性 | 海外産の安価なシャインマスカットが市場に出回り、国内産が価格競争で不利になる |
ブランド | 世界規模で「シャインマスカット」の知名度が上がる | 品質管理が甘い海外産が混ざると、「日本産=高品質」のブランドイメージが毀損する |
輸出 | 日本の農家も将来的に輸出しやすくなる可能性がある | 輸出制度が整っていない段階で海外にライセンスを出すと、国内農家が先に割を食う |
制度面 | 知的財産を活用する先進的モデルに参加できる | ライセンス収益の分配方法が不透明だと、農家に還元されないリスク |
農家にとっての本音
- 「ライセンス料がしっかり農家に還元されるならまだ理解できる」
- 「でも輸出の制度整備もないまま海外に先を越されるのは納得できない」
- 「ブランド維持のための品質管理をどうするのか?」
こうした声が国内農家から強く出ています。
まとめ:国内農家に必要なのは「安心できる制度設計」
橋下氏の言う「最強のビジネスモデル」は、知財ビジネスとしては理にかなっています。
しかし、それを現実に国内農家の利益につなげるためには以下の前提条件が欠かせません。
- ライセンス料をどう農家に還元するか明確にする
- 海外産との品質差別化を守る仕組みを作る
- 国内農家が輸出しやすい制度を同時に整備する
この3つが担保されなければ、国内農家にとっては「最強」どころか「最大のリスク」になりかねません。
👉 今後の議論の焦点は「収益の分配」と「ブランドの保護」に移っていきそうです。