最近、飲食店や小売店で「現金お断り」「キャッシュレス専用」という表示を見かけることがあります。
現金は“強制通用力”を持つ法定通貨なのに、本当に店側は現金払いを拒否していいのでしょうか?
結論から言うと、一般の店舗が現金を受け付けないのは合法です。
ただし、現金を拒否できないケースも一部存在します。
ここでは「強制通用力とは何か」「店側が現金を断れる理由」「断れないケース」をシンプルにまとめて解説します。
強制通用力とは「契約後」に効力を持つもの
日本の通貨(日本銀行券)は、法律上「強制通用力」を持ちます。
これは簡単に言うと、
“すでに発生した支払い義務を、相手は現金での弁済を拒否できない”
というルールです。
ただしここで重要なのは、
**この強制通用力が働くのは「契約が成立した後」**だという点。
店と客の間で売買契約が成立する前には、
店側が「この条件で売ります」と提示し、客がそれを受け入れる必要があります。
店が「現金お断り」にできる理由
飲食店や小売店と客の関係は、民法上の「契約」です。
契約では、
- どの決済手段を受け付けるか
- どのような条件で販売するか
は 店側が自由に決めてよい とされています。
つまり店が事前に「現金不可・電子決済のみ」という条件を掲示していれば、
客がその条件に同意しない限り契約は成立しません。
この段階ではまだ債務(支払い義務)が生じていないため、
強制通用力は適用されないというわけです。
客が「現金しかない」と言った場合はどうなる?
この場合は、まだ契約前なので、
- 店は「現金NGなので販売できません」と断れる
- 客は「じゃあ買いません」と離れる自由がある
というだけです。
法律的には問題ありません。
例外:現金を拒否できないケース
一部、「現金を受け取らなければならない」サービスがあります。
これは店と客の自由契約とは異なり、法律で義務が定められているためです。
●公共料金(電気・ガス・水道など)
事業者には供給義務があり、
現金で支払う手段を用意する必要があります。
●税金・罰金・公的手数料
国や自治体は、
現金の受け取りを拒否できません。
ここでは強制通用力が直接機能します。
まとめ
| ケース | 現金払いを拒否できるか | 理由 |
|---|---|---|
| 飲食店・小売店 | 拒否できる | 契約前の条件設定は店の自由 |
| 公共料金 | 拒否できない | 法律で現金払い手段の確保が義務 |
| 税金・罰金 | 拒否できない | 現金の強制通用力が働く |
結論として、「現金が使えない店=違法」ではありません。
店舗は支払い方法を自由に設定でき、客もそれを選ぶ自由があります。
ただし、公的サービスに関しては別ルールで、現金拒否はできません。

