金融庁が、上場企業の「現預金の使い道」に関する説明責任を明確化する方向で、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の改訂を検討していることが報じられました。
これは、企業が保有する過剰な現預金を「なぜ使わないのか」「どんな目的があるのか」について、株主に説明するよう促すものです。
背景:日本企業の“貯め込み体質”に海外投資家の不満
日本企業の中には、利益を上げても内部留保としてため込み、株主還元や投資に踏み切らないケースが多いと指摘されてきました。
特に、海外投資家からは「資本効率が悪い」と批判されることがあり、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業が多い一因とも言われています。
今回の改訂は、そうした“貯め込み体質”を改め、株主へのリターンを増やす狙いがあるとみられます。
以下は企業例になります。
企業名 | ネットキャッシュの水準¹ | 特徴・株主への影響ポイント |
---|---|---|
信越化学工業 | 約 1兆6,747 億円(NetCash) | キャッシュが非常に潤沢。株主還元・成長投資の余地大。説明責任の強化で還元期待が高まる企業。 |
任天堂 | 約 1兆4,844 億円(NetCash) | 現預金・有価証券合計でも巨額。手元資金をどこに使うか/株主還元をどうするかが注目される。 |
キーエンス | 約 9,404 億円(現金・預金規模) | 製造・機械系で高収益。キャッシュリッチな体制なので、株主還元・M&A・成長投資いずれかの動きが期待される。 |
株主への影響:配当・自社株買い拡大の可能性も
説明責任が強化されることで、企業は「なぜ現金を保持しているのか」を明確にする必要が出てきます。
その結果として、
- 明確な成長投資の計画がない企業は、現預金を株主還元(配当、自社株買い)に回す圧力が強まる
- 投資家からの「資本効率」への注目度が上がり、PBR1倍割れ企業への改革要請が加速する
- 株主還元方針が曖昧な企業が市場で評価されにくくなる
といった動きが見込まれます。
つまり、「説明責任=還元強制ではない」ものの、実質的には株主還元の追い風になる可能性が高いです。
施行時期:2025年中の改訂見込み
金融庁は2025年中に改訂を目指しており、来年以降の株主総会シーズンから影響が出始めるとみられます。
企業側は、資本政策を再検討する動きが早ければ年内にも始まる可能性があります。
まとめ
- 金融庁が企業統治指針を改訂へ
- 上場企業は現預金の使い道を説明する義務が強まる
- 実質的に、株主還元(配当・自社株買い)圧力が高まる見通し
- 2025年中に改訂予定
株主にとっては、眠っていた企業資金が動き出すチャンス。
今後は「どの企業が還元姿勢を強めるか」が、投資先選びの重要な視点になりそうです。