日本国内で高可用性・災害対策を考えるなら、AWSの東京リージョン(ap-northeast-1)と大阪リージョン(ap-northeast-3)を組み合わせたマルチリージョン構成は非常に有力な選択肢です。
本記事では、マルチリージョン構成の基本、具体的な構成例、そして気になる導入・運用コストまで詳しく解説します。
AWSリージョンとは?
AWSの「リージョン」は、地理的に分かれたデータセンター群の単位で、各リージョンは複数のアベイラビリティゾーン(AZ)で構成されています。
- 東京リージョン:
ap-northeast-1
- 大阪リージョン:
ap-northeast-3
基本的には、サービスをどこに置くか=リージョンを選ぶことになります。
東京リージョンと大阪リージョンの違い
項目 | 東京リージョン | 大阪リージョン |
---|---|---|
AZ数 | 4つ | 3つ |
サービス対応 | ほぼ全サービス対応 | 一部未対応あり(拡大中) |
主な用途 | 日本国内向けの一般サービス全般 | 災害対策、BCP、関西特化サービスなど |
東京リージョンは日本国内の標準的な選択肢ですが、災害時のバックアップとして大阪リージョンを併用することで、サービス継続性を高めることができます。
マルチリージョン構成の基本パターン
パターン①:Active-Standby構成(東京:本番、大阪:待機)
東京リージョンでサービスを稼働させ、大阪リージョンはバックアップとしてレプリケーションやスナップショットを保存します。
特徴
- コストを抑えつつ可用性を確保
- 障害時はRoute53などで手動/自動切り替え
技術要素
- S3クロスリージョンレプリケーション
- RDSスナップショットの大阪側保管
- Route53フェイルオーバー設定
パターン②:Active-Active構成(東京+大阪 両方本番)
両リージョンに同じ構成を展開し、ユーザーの位置やシステム負荷に応じてリクエストを分散します。
特徴
- 高可用性・即時切替が可能
- Aurora Global Databaseなどでマルチリージョン同期
技術要素
- Route53の地理ベースルーティング
- Aurora Global DB、DynamoDB Global Tables
- Global Accelerator(必要に応じて)
ロードバランサーとの違いと使い方
AWSのELB(Elastic Load Balancer)は、あくまで1リージョン内の複数AZ間での分散を行うもので、リージョンをまたいだ分散はできません。
マルチリージョンでの負荷分散を実現するには?
- Route53:地理ベースやヘルスチェックによるDNSルーティングが可能
- AWS Global Accelerator:低レイテンシで世界中のユーザーを最適なリージョンへ誘導可能
つまり、マルチリージョンでは「Route53やGlobal Acceleratorで各リージョンのELBに振り分ける」構成をとります。
導入・運用コストの目安
初期導入費(外注 or 自社)
項目 | 概算 |
---|---|
自社構築 | 無料~数十万円(人件費のみ) |
外注(SIerなど) | 50~200万円程度 |
月額運用費の例(Active-Standby構成)
サービス | 概算(月額) |
---|---|
東京:EC2 ×2台 | 約7,000円〜 |
東京:RDS | 約1万〜2万円 |
S3(100GB) | 約300円〜 |
大阪:バックアップS3/RDSスナップショット | 数百円〜1,000円程度 |
Route53 | 約1,000円〜2,000円 |
合計 | 約2~3万円 + 本番構成費用 |
Active-Active構成の場合、基本的にコストは倍近くかかります。
注意点とおすすめ戦略
注意点 | 解説 |
---|---|
データ同期の整合性 | 定期的な検証や整合性維持の仕組みが必要 |
障害切替の自動化 | Route53やLambdaなどを使って設計 |
コスト管理 | DR先もコストがかかるので無駄を避ける設定が大事 |
テストの実施 | 年1回以上のフェイルオーバーテストを推奨 |
まとめ
シナリオ | おすすめ構成 | 理由・ポイント |
---|---|---|
一般的な日本国内向けサービス | 東京リージョン単独 | サービス・対応が最も充実、コストも抑えられる |
災害時に備えたい(BCP対策) | 東京+大阪(Active-Standby) | 東京本番+大阪バックアップで安全性アップ。コストも比較的抑えられる |
高可用性・即時切替が必要 | 東京+大阪(Active-Active) | 両リージョンで常時稼働。災害時にも切替不要。ただしコスト・設計が複雑 |
関西ユーザー向け特化サービス | 大阪リージョン単独 or メイン | レイテンシを最小限にできる(関西圏に限定される場合) |
グローバルなユーザーを最適ルートで案内したい | Global Accelerator+各リージョンのELB | 世界中のユーザーに最適なルーティングが可能。高パフォーマンス |
このように、目的に応じてリージョンと構成を選ぶのがベストです。
「ビジネス継続性」や「自然災害対策」が重視される現代において、AWSのマルチリージョン構成は強力な選択肢となります。東京リージョンだけで運用している方も、ぜひ一度、大阪リージョンとの組み合わせを検討してみてはいかがでしょうか?